申真諝九段とKataGoによる近年の対局結果は、多くの人々に李世乭(イ・セドル)とAlphaGoによる歴史的な対決を回想させています。「人間対機械」という構図は変わりませんが、この10年間で囲碁界の風景は劇的に変化しました。ここでは、李世乭時代と比較しながら、申真諝のパフォーマンスの意義を分析します。
李世乭は未知と対峙し、申真諝はAIを吸収した
2016年、李世乭とAlphaGoの対局は、正体不明のAIとの正面衝突でした。当時、囲碁界はAIの強さを推し量る術を持たず、李世乭は未知の存在に対して孤軍奮闘する先駆者でした。
対照的に、現代の申真諝にとってAIは克服すべき敵ではなく、日常的なトレーニングパートナーです。「申工知能(申真諝+人工知能)」という愛称でも知られる彼は、AIが推奨する手の論理を深く理解し、それを実戦に応用しています。彼は単にAIを模倣するのではなく、AIの序盤戦略や戦闘スタイルを再解釈し、独自のプレイスタイルへと昇華させています。李世乭の対局が「超高度AIの到来」を告げるものだったとすれば、申真諝のキャリアは「AIを活用することで極限まで進化した人間」の姿を証明しています。
申真諝とは何者か?
2000年生まれの申真諝は、現在韓国および世界ランキング1位の囲碁棋士です。「申工知能」の異名の通り、AIが推奨する「ブルースポット(最善手)」を極めて高い確率で打ち続けることで知られています。有利な状況でも最後まで相手を追い詰める、決して退かない猛烈な棋風が特徴です。
主な業績
- 沖岩(チョンアム)道場 [韓鐘振(ハン・ジョンジン)門下]
- 第1回英才入団 [申真諝、申旻埈]
- 2014年 – 囲碁大賞:新人王
- 2016年 – 囲碁大賞:勝率1位(76%)
- 2018年 – 囲碁大賞:MVP、最多勝(82勝)、勝率1位(77%)、最多連勝(18連勝)
- 2019年 – 囲碁大賞:最多勝(78勝)、勝率1位(80%)、最多連勝(25連勝)
- 2020年 – 囲碁大賞:MVP、最多勝(76勝)、勝率1位(88%)、最多連勝(28連勝)、人気投票1位
- 2021年 – 囲碁大賞:MVP、最多勝(80勝)、勝率1位(82%)、人気投票1位
- 2022年 – 囲碁大賞:MVP、最多勝(79勝)、勝率1位(85%)、最多連勝(18連勝)
- 2023年 – 囲碁大賞:MVP、最多勝(111勝)、勝率1位(88%)、最多連勝(29連勝)、人気投票1位、特別賞(年間最多勝記録更新)
- 2024年 – 囲碁大賞:MVP、最多勝(65勝)、勝率1位(83%)、人気投票1位
- 2025年 – 囲碁大賞:MVP、人気投票1位
- 2026年 – Ssen Math/Hankyung Gishinトーナメント第2局・第3局勝者
昇段履歴
- 九段 / 2018年4月7日
- 八段 / 2017年4月23日 [トーナメント優勝]
- 七段 / 2017年3月30日
- 六段 / 2016年5月22日 [中国囲棋リーグ]
- 五段 / 2015年12月22日 [Let’s Run Park杯優勝 – 特別昇段]
- 三段 / 2015年3月2日 [第34回KBS囲碁王戦]
- 二段 / 2013年11月20日 [第19回GSカルテックス杯]
- 初段 / 2012年7月17日 [第1回英才入段大会]
AlphaGo以降の、新しい囲碁の楽しみ方
AlphaGoショック以来、囲碁AIは恐るべきスピードで学習を続けてきました。人間が互先(ハンディキャップなし)で勝つことは事実上不可能です。したがって、申真諝と現代のAIの対局を観戦する際は、10年前の李世乭を応援していた時とは異なる視点が必要です。
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ハンディキャップ戦の限界:
トップクラスのAIとの対局は、人間が先に石を置くハンディキャップ戦で行われます。焦点となるのは「何子置くか」であり、「どれだけ差を詰められるか」が現代囲碁の大きなテーマとなっています。 -
時間圧力:
結果は、直感に頼る早碁か、深い読みを必要とする長考かによって変動します。機械は疲労しませんが、人間には体力と集中力の限界があります。 -
ブルースポットの一致率:
勝敗記録以上に注目すべきは、申真諝がどれだけ頻繁にAIの算出した最適解「ブルースポット」を打てるかです。他の棋士を圧倒するその一貫性こそが、彼の最大の武器です。
2026年 KataGoとの対局:圧倒的な演算能力を超えて

Ssen Math/Hankyung Gishinトーナメント第1局

Ssen Math/Hankyung Gishinトーナメント第2局

Ssen Math/Hankyung Gishinトーナメント第3局
| 日付 | イベント | 結果 |
|---|---|---|
| 2026.07.21 | Ssen Math/Hankyung Gishin 第3局 | 申真諝(黒)11.5目勝ち |
| 2026.07.19 | Ssen Math/Hankyung Gishin 第2局 | 申真諝(黒)4.5目勝ち |
| 2026.07.17 | Ssen Math/Hankyung Gishin 第1局 | KataGo(白)中押し勝ち |
これらのスコアは、2026年7月に行われた三番勝負の結果です。申真諝は二子置きのハンディキャップ戦において、2勝1敗でKataGoを下しました。
KataGoは4枚のRTX 3090グラフィックボードを並列稼働させるという、人間の脳とは比較にならないほどの莫大なハードウェア演算能力で運用されていました。申真諝はこれに対し、単なる守勢に回るのではなく、盤面全体に厚みを築く戦術で対抗しました。計算が困難になるような複雑な乱戦にAIを誘い込み、ミスを引き出したのです。これは、機械の死角を突くという人間の戦略的勝利でした。
結論
10年前の李世乭の勝利が未知の機械に対する奇跡的な一撃だったとするなら、申真諝の勝利はAIの論理を解剖することで獲得した人間の知性の進化と言えます。今後は、勝敗の結果にのみ注目するのではなく、人間がAIの「正解」にどこまで迫れるか、そしてどのような創造的な戦略で盤面を構築するかに注目することをお勧めします。
📸 舞台裏
Naverブログで舞台裏の写真をご覧いただけます (韓国語):
신진서 카타고, 이세돌 알파고로 보는 바둑 인공지능 대결(기보 포함)
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